昨年はビットコイン(以下BTC)が爆上がりしましたよね。私はまだBTCを持っていないにも関わらず、毎日ドキドキしています。
さて、なぜこれほどBTCが爆上がりしたのでしょうか?
証券のスペシャリストに勉強会をしていただきました。
株式市場創設にかかわり、また自ら証券会社を設立したという証券界を知り尽くした経験者で、IPOキャピタルパートナーズ代表取締役社長の黒田喜久氏です。
と言いましても、弊社の会長です。
手前味噌ですが、証券会社の設立を決意し、全国を周って14億円の資本金を集めたと言う、とにかく行動力と先見性のあるパワフルな人。
YouTubeが流行る以前に、自身がやっていた勉強会も常に200人以上の投資家の間で支持され、その分析力には定評があります。
今回のお話は素人の私でもとてもわかりやすかったので、皆さんにもシェアさせていただきました。

 

話者:黒田喜久氏
■職歴・経歴
証券株式会社の営業部に勤務後、旧株式会社ジャスダックに転籍。“JASDAQシステム”の設計、売買業務、決済業務等に携わる。特則制度・マーケットメイク制度の導入に参画。
1999年6月 ナスダック・ジャパン株式会社入社
ナスダック・ジャパン市場の創設に参画。シニアディレクターなどを歴任。
2004年 IPO証券株式会社設立 代表取締役社長
2008年 IPOキャピタルパートナーズ株式会社設立 代表取締役社長
2017年 株式会社Vカレンシー会長
他多数社の取締役、監査役、顧問を兼任

BTC高騰のワケ

BTCの価格上昇の要因としては、主に以下の2点。これについて考察しよう。
1) 背景に世界的な大規模金融緩和政策によるカネ余り
2) BTCは将来の上限数が2,100万枚と決まっている

そして、ポイントは「増え続けることが出来るお金(ペーパーマネー)に対して、上限があり増え続けないBTC」。

BTCの価値が上がったのではない

BTCが上がったのではなく、BTCを買えるお金、つまりペーパーマネーの価値が低下したと考えるべき!
理由はリーマンショック後の景気低迷を回復させるため大規模な世界的な金融緩和が続いていた。そしてさらに昨年からはコロナにより各国で給付金・助成金、金利引き下げ等が行われ、さらに拍車がかかった。
いわばお金がばら撒かれている状況と言わざるを得ない。
世界中で輪転機がフル回転され、大量のお金を刷っている為、今は世界中で金余りの状態。これは誰かの判断(中央銀行の判断)で簡単に希薄化してしまうペーパーマネーの仕組みがわかると思う。
一方、BTCは2,100万枚と上限が決まっているし、そこまで増えていく過程も周知されている。これは中央銀行が管理監督する現在のお金の仕組みとは全く違うことであるし、BTCが誕生した意義や背景にもなっている。

ペーパーマネーの価値が希薄化

例えば、以前アフリカ等で紙幣の価値が日々暴落し、今日その国のお金で100単位持っていけば買えるパンが、翌日になると500単位、さらに翌々日になると1,000単位無ければ買えなくなった。などと言う話を聞いたことがあると思うが、BTCの立場からペーパーマネーをみると今はまさにその現象。
BTCをパンに例えるとよくわかると思う。
1BTCは今も昔も1BTC。パン1個はあくまでパン1個。将来も含めて考えると、あくまで1BTCは2,100万枚のうちの1枚にしかすぎない。
去年は1BTCが100万円前後で購入できたが、現在350万円無いと誰からも売って貰えない。そう考えたらどうだろうか。先のアフリカのパンの話と同じではないか。
これは、円やドルのペーパーマネーの価値が下がっていると言うこと。BTCをペーパーマネーに変換しないのなら、1BTCを保有している人が2BTCに増えたわけでは無く、あくまで今も1BTC。つまりBTCの価値は変わってなく、ペーパーマネーの価値が希薄化により低下していると考えるべきかと思う。

世界中で今はバブルと言わざるを得ない

円とドル、ドルとユーロなど為替変動だけを見ていれば、どちらの国の中央銀行が紙幣をより発行しているかで優劣がつくだろう。
今はどの中央銀行もほぼ同じペースで輪転機を回している。そのためどこかの国がインフレになった、などと言う話は聞かない。
しかし、BTCと言う数量が決まっている世界からみれば、今の各中央銀行が発行する紙幣の量は半端なく多く、世界中でインフレ状態を作り出しているといってもいいのではないかと思う。
ブルームバーグが1月8日に記事にしたが、それによると世界の食品価格が高騰してきており、今年に入り過去最高値だそうだ。日本ではコロナにより飲食店に制限をかけるなどして食料品が余っているなどとニュースになっているが、世界を見れば高値を切り上げている。12月にNYダウやNASDAQ以上にトウモロコシの価格が上昇したのも関係あるかもしれない。つまり、これは希薄化によりペーパーマネーの価値が下がってきているのではないかと私は思っている。

<金融緩和によるカネ余りの構図>
世界的な金融政策によってお金がばらまかれる

お金余る

株式、不動産、仮想通貨等のリスク投資にお金が流れる

バブル発生

BTC価格の今後の動きは金利がカギ

BTCが今後どう動くか予測するのは難しいが、鍵となるは金利。
「1. 各中央銀行の足並みがそろった金融政策が続くかどうか」
「2. 中央銀行が意図しない金利上昇が発生しないかどうか」。
この2点だと思うし、1より2の方が下落リスクは高まると思う。

今の足並みがそろっている各国の金融政策を基本とし、このまま量的緩和でお金を刷り続け、さらに今の金利状況が今後も続けば、私は今のバブル状態がはじけるということは無く、BTC市場も調整をはさみながらリスクマネーが入ってくると考えている。
しかし、どこかの中央銀行が護送船団の動きからはずれ、今の緩和政策をやめた場合、上述の「足並みがそろった」と言う前提が崩れる。これは注意すべきこと。

さらに、もし中央銀行は足並みをそろえた緩和政策を継続しているにも関わらず「中央銀行の意図しない形で金利だけが上昇してしまう」という事態が発生した場合、その時は仮想通貨に限らず株式等のマーケット全体も逆回転をし始める可能性があることはイメージを持ち注意を払って見ておく必要がある。
なお、バブルがはじけるときは意外に鈍感で、バブルと言うのは最後の残り火が一番燃え上がることも忘れないで記憶しておくべきだろう。事実、1989年に日経平均は終値で38,915円87銭という最高値をつけた。
しかし当時、日銀は公定歩合を徐々に上昇させていたにも関わらず株価はそれを無視する形で上昇。しかし翌年これが一気に巻き戻された。
言えることはBTCも株式同様リスクマネーで動いており、その基本的な動きは株と変わらないように思う。

2021年1月のBTC価格急落について

2021年がスタートするや否やBTCは急落を見せた。
いろいろな所で解説されていたのは、『BTCの年始の下落は一部の機関投資家が利益確定売りに出た』と解説されていた。売り物が出れば下がるのは当たり前である。
しかし考えるべきは「なぜ機関投資家が利益確定をしたのか?」であろう。

2017年末にBTCが当時の最高値をつけた際、その3か月前から米国10年債の金利は上昇を始めていた。
2020年末にBTCは高値を連日切り上げていたが、BTC価格上昇とは逆に10月頃からじわじわと金利は上昇をはじめ、1月になると一段高を見せた。
つまり、同じ現象が見られたことを勘案すると、やはりBTCの価格も株式同様金利には敏感であると言える。
もしこのまま金利の上昇傾向が続くとBTCの調整は避けられなくなるため、米10年国債などの金利は常にチェックが必要かと思う。

金利上昇で動く人の心理

金利が0%から2→3→4→5%と上昇すると、人々の心理はどう動くのか?
銀行金利が高く貯金をしておけばどんどん預金残高が増えるのであればリスクを取って増やそうとする人は少ないのは当たり前である。
しかし、預金しても資産が増えないなら、リスクを取ってでも投資しなければならない、と考える人が増えるのは当然だろう。
これは当たり前にある投資家心理。


情報元TradingView

情報元bitflyer

BTCには資産評価するものが無くデータでしかない

さて、BTCとは何なのか?を考えてみたい。

BTCを「デジタルゴールド」、「金に変わる安全資産」などと呼ぶ人はいるが、私はそうは思っていない。では何かと聞かれたら、一言で言うと「BTCは空気」。「ただのデータ」だというのが私の理解だ。
誤解をしてもらいたくないので先に言っておくが、私もBTCには期待をし、そのためある程度保有しており、その上での発言である。

例えば、株式投資なら、たとえ株価が下がっても、配当や株主総会に参加でき、株主優待券という現物対価がある。
不動産投資も下がっても土地や建物という現物対価がある。
金投資なら現物がネックレスにもなるし金貨や地金という現物対価にもなる。
しかし、BTCはどうか?
BTCには現物対価になるものは無く、言い換えればBTCはただのデータにすぎない。だから先ほど空気と言った。

では何故価格が上昇しているのか?理由は2つあり、そのどちらに当てはまるのか私にはまだわからない。

1つ目は、「人々がBTCを保有することの利便性を評価している」からであり、いわば「評価価値」であると言える。
BTCを教科書的に考察すると、
1.BTCは中央銀行のように中央集権的な機関を必要としない
2.特定の企業にも依存せず取引が行える
3.銀行送金などと比べて手数料が格段に安く、また為替変動は関係なく世界中のどこからどこへ向けてでもダイレクトに送金が完了できる。
とこうなる。

当初BTCが2万枚でピザが1枚買えた、などという話も出回ったが、BTCの価格が上昇するのは、年数を経てこの「BTCの特徴に価値がある」と認める人が多くなってきているからという事だろう。また、ゴールド(金)を知ってる?と聞けば、お年寄りも高校生も「金は知ってるよ!」とほぼ100%の人が答えるだろう。
しかし、あなたの周りで「ビットコインって知ってる?」と聞いた場合、BTCを認知しているのはいまだ5%に満たないのではないか。
つまり知らない人が知った場合、当然その人は興味を持つわけで、そうなれば、BTCマーケットに参加する可能性はある。そしてこれが10%、20%と知っていく人が増える過程で資金流入があり、BTCの評価が上がる可能性は考えられる。
ただ,「評価価値」でしかない以上、もしその評価されるべき特徴のうち一つでも崩れたらどうなるだろうか。
例えば相互に監視しあっているブロックチェーンの仕組みに問題があった、とか、何か一つに疑問が持たれたら、その時BTCは一気にその価値を失うだろう。
これは仮定の話だが、そうなると「BTCは現物対価が無く実はただのデータだった」と人々は一気に気が付く事になり、存在そのものが消滅してしまう可能性さえある。
つまり、まだまだいろいろな事が不確実であるのは確かだ。
という事はBTCそのものが、自身の価値を維持することが出来るかどうかがキーになる。

2つ目は「バブル時に生まれる未知の金融商品」の可能性も残されている。
どういうことかと言うと、
1989年のバブル経済真っ只中の日本では、「牛に投資」などと言うものがブームになった。
2000年のインターネットバブルでは、ドットコム企業なるものがもてはやされるものの多くが消えていった。
2008年のリーマンショックでは、その引き金となった「サブプライムローン」なるものを投資商品としていた。
これらは全て実態が無く、あとになれば何の資産も残さなかったものである。

金融バブルが起こったとき、必ずと言っていいほどその時はブームになるものの、結果消えてなくなってしまうものが生まれる。

冒頭に「では何故価格が上昇しているのか?理由は2つあり、そのどちらに当てはまるのか私にはまだわからない。」と言ったが、上昇の理由が一つ目であればBTCがこのまま評価を上げていけばポジティブになる。しかし2つ目であるとデータであるがゆえ消えてなくなる可能性もある。

評価の基になるBTCの魅力は維持されているか

BTCが登場したころ、その特徴の一つとして送金のしやすさが魅力だった。
しかし、BTC登場以降、PayPay等の電子決済が普及し、国内送金については何とも手軽になった。
また、海外送金もMoneyGramなどを通じれば、スマホから簡単に行えるようになっている。
そういう意味からすると、仮想通貨なら送金は簡単!という魅力の一つが薄れてきているように思うし、むしろ銀行口座の普及率が10%から20%という国の方が多い。そうなると、BTCで送金してもBTCそのもので支払いが出来なければ、受け取った人は通貨に変えることが出来ないことから、今のところMoneyGramなどの送金サービスの方が便利だし、手数料も取引所を通じたBTCより格段に安い。

また、現在、中国はデジタル人民元の導入準備を進めているが、国営のデジタル通貨等がビットコインの利用価値を上回れば、果たしてBTCは必要なのか、と言う議論が出てくるかもしれない。各国中央銀行はそうしたいのだろうが、私はBTCの特徴の一つである中央集権的を無くすニーズがそれを上回ると思っている。とはいえ、BTCの誕生時とは、環境や背景が多少変化している事は念頭に入れておかなくてはいけない。

BTCは誕生から上がり続けている

私のオリジナルチャートは移動平均線の組み合わせで、これは機会があればご紹介したい。月足という極めて長い期間をみると、BTCは誕生以来ずっと90か月移動平均線は上昇している。

BTC以外の仮想通貨は

仮想通貨でもし最後まで残るならBTC以外は無いと思っている。なぜなら、BTCには他の仮想通貨と大きな違いがある。

1)「有限資産」
2)「非中央集権型資産」

➡BTCは、中央集権しないことが前提で、これは現在の中央銀行ありきのペーパーマネーとははっきりと違う事。
また、誰かの意思で量が増えたり減ったりと、意図的な裁量が邪魔をすることができないというのも、中央銀行ありきとは違こと。
さらに数量が決められていること。

他のコインと比較すると、ほとんどが量を増やすことができるか、あるいは誰かの裁量が働くと言う点では、仮想通貨が今後存在するのなら、最後まで生き残るのはBTCしかないかもしれない。

ダンディな会長もカメラを向けると、少々照れていらっしゃる様子

後記

投資って分かると面白い!
他にもSEC訴訟問題やデジタルゴールドと言われる理由等、非常に分かりやすく説明して下さったお陰で、色々な事が繋がりました。全てを書ききれていないのが残念です。
投資は未来を見ると言うことなのだと改めて感じます。未来の事を考えるのは、やはり楽しいです。
文字では伝わらないですが、力強い口調が印象的の黒田会長。語り掛けてくれるので、難しい言葉や内容がちゃんと頭に残ります。
ぜひ、オンラインサロンを実現していただけないかしら?

身内と言えど長年働いている社員すらお会いすることは難しい方ですが、このような貴重な機会に感謝します。
そして、次回の開催を勝手ながら、楽しみにしております。